民法改正(6)
損害賠償及び費用の償還の請求権についての期限の制限
原状回復及び有益費の請求期限 賃貸借契約における第 600 条「損害賠償及び費用の償還の請求権についての期限の制限」 について第二項が新設されました。
第 600 条①契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出し た費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
②前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでは 時効は、完成しない。 本条は貸主からの原状回復費用の請求及び借主からの有益費等の償還請求は、明け渡し後 一年以内にしなければならないというものです。
今回②が新設されました。 ②は、「債権は行使できることを知った時から 5 年、又は行使できる時から 10 年経過する と消滅する」、所謂消滅時効から貸主を守る条文です。 つまり 10 年前に建物に借主の過 失による損耗があった場合、貸主が損害賠償請求権を行使できるのは損害の発生を知って から 5 年又は発生してから 10 年以内ということになりますが、それを否定して明渡しを受 けて一年を経過するまでは貸主は請求権を有するとしたものです。
ついでながら今回時効に関し大きな改正がありました。 従来、飲み屋のツケ、旅館の宿泊費、医者の診察代、小売店の商品代など品目ごとに 1 年 から 3 年の消滅時効が設定されていました(短期消滅時効)が、これらは全面廃止。 債 権の消滅時効は商事債権も含め一律次のように改正されました。
第 166 条
①債権は、次に掲げる場合には、事項によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使をしないとき。
②債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しな いときは、時効によって消滅する。
③(省略) 念のために付け加えると、敷金は法第 600条の借主が支出した費用の中には含まれません、 敷金は費用ではなく預け金です。 敷金返還請求権の消滅時効は第 166 条①が適用されます。つまり明け渡し後、通常は 5 年ということになります。